株式会社ライモック

お問合せ

さんまずし【和歌山県】

一にめはり、二にサンマ

   さんまずしは、秋刀魚(サンマ)を用いた押し寿司で、静岡県下田市白浜が発祥の地であり、三重県の志摩半島から和歌山県に至る熊野灘沿岸一帯、奈良県十津川村や奈良県旧大塔村で食べられる。 和歌山のさんまずしは、サンマが10月下旬から3月になると、産卵のために三陸沖から寒流にのって熊野灘に南下し、和歌山県の沿岸部全域でとれるが、特に南方の熊野灘でとれるサンマは、長い時間潮にもまれて身が引き締まり、小ぶりで脂もほどよく抜けているため、すしに適している。 「さんまずし」はもともと、米飯や魚の保存食としてつくられ発展したもので、秋祭りや正月など、人が集まるときに振る舞うごちそうだった。とくに稲作のできない山間部では、貴重な栄養源となっていた。 秋祭りや正月、船の進水祝いなど、行事ごとになると必ず家庭でつくられていた。現在も、正月にはつきものである。祝い事のときは頭をつけたままで押しずしにする。潮岬を境に、西牟婁郡では腹開き、東牟婁郡では背開き、と捌き方に違いが見られる。大晦日につくり、年明けに焼く「焼きさんまずし」もある。 地域によってはサンマのことを「さえら」「さいら」と呼ぶ。硬く握った「さんまずし」は、鉄砲の筒のようでもあることから「さえらの鉄砲」とも呼ばれる。 新宮市生まれの作家、佐藤春夫も「さんまずし」を好み、「ふるさとで一番美味しいものは、一にめはり、二にサンマ」と語ったという。