狩野モデル
「狩野モデル」は、東京理科大学名誉教授の狩野紀昭氏が1980年代に開発した顧客満足モデルです。
このモデルは、アンケートから得たデータをもとに、顧客にとっての品質(機能・性能)を、「魅力的(差別化)」と「当り前(不可欠)」などに順位付けを行います。それにより、顧客から見た製品の特徴を「見える化」し、設計開発における議論を活性化させる手法です。
<参考文献>
狩野紀昭ら「魅力的品質と当り前品質」品質, Vol14, No2, p147-156(1984).
【魅力的品質】
それが充足されれば満足を与え、不充足であってもしかたがないと受けとられる品質です。
顧客はこの品質に高い満足度を感じ、そして、その品質を得るために対価を支払います。
なお、最初のうちは、これを引き出す質問を用意することすら難しいものです。プロジェクトを進める中で、この質問を見つけることが大切です。
【一元的品質】
それが充足されれば満足を与え、不充足であれば不満を引き起こす品質です。
この品質の増加や向上によって、顧客満足度が向上します。また、機能が減少すると満足度は低下します。
企業は、コストと利益を考えながら、その品質を加えることを検討します。
【当たり前品質】
それが充足されていれば当たり前と受け止められ、不充足であれば不満を引起こす品質です。
顧客は、このような品質がどれほど競合他社より優れていても、どちらでもよいと感じます。そして、その品質がなければ対価を支払う意思がなくなります。
【無関心品質】
充足でも不充足でも、満足も与えず不満も引起こさない品質です。
この品質は、ビジネス価値をほとんどもたらさないものです。
【逆品質】
充足されているのに不満を引起こし、不充足であるのに満足を与えたりする品質です。
この品質は、顧客から見れば不要なもので、ない方が顧客に好まれるものです。
アンケートの設問
アンケートは、同じ内容で、肯定的な質問と否定的な設問を用意します。
【設問例】
a) もし、あなたのテレビの画面の状態が、悪かったならば(例えば二重に映るなど)、あなたはどう思いますか?
・気にいる
・当然である
・なんとも感じない
・しかたがない
・気に入らない
・その他
b) もし、あなたのテレビの画面の状態が、良かったならば(例えば、二重に映らないなど)、あなたはどう思いますか?
・気にいる
・当然である
・なんとも感じない
・しかたがない
・気に入らない
・その他
アンケートの評価
アンケートの評価は、2次元表にまとめ、回答の多い組み合わせから評価します。
すなわち、「充足が気にいる」、「不充足が当然」の組み合わせが一番多ければ、魅力的評価となります。
※ 懐疑的評価は、一般的に考えにくい評価(充足及び不充足とも「気にいる」など)です。
「懐疑的評価」及び「逆評価」は、質問及び回答のペアを詳しく調べることが必要です。
顧客の購入の意思決定
「満足の向上」と「不満足の解消」を区別して、品質(機能・性能)の製品企画を行うことが大切です。
「狩野モデル」の意義
1) 品質向上活動の実践において、2つの誤解が散見しています。
・不良やクレームの軽減を図れば、ユーザーの満足が得られるとの誤解で、「当り前品質」のみに注力している。
・機能追加など行っていれば、ユーザーの満足が得られるとの誤解で、「魅力的品質」のみに注力している
2) 「当り前品質」と「魅力的品質」では、その追求の方法論が、かなり異なるにもかかわらず、両者を区別せずに製品開発を進めたために、企画時と異なった市場評価を受けることがあります。
3) 「狩野モデル」を活用することで、企画の方向性を明確にすることができます。